経橈骨動脈的冠動脈形成術 TRI

 カテーテルを用いた冠動脈造影検査、あるいは冠動脈形成術(ステント治療)を行う際、カテーテルをどこから入れるのかという点は、患者さんにとって非常に重要な問題となり得ます。

 以前は大腿動脈という足の付け根(鼠径部)にある太い動脈を用いることがほとんどでしたが、現在では橈骨動脈と呼ばれる手首にある血管からカテーテルを入れることが主流となっています。大腿動脈は血管が太く、カテーテルが安定するため、手技自体が容易になりますが、カテーテルを抜去して止血を行った後に長期の安静が必要となり、数時間程度、寝たまま動けない状態を余儀なくされてしまいます。一方で、橈骨動脈を用いる場合は、大腿動脈と比較して血管が細いために、使用できるカテーテルの太さが限られること、患者さんによっては血管が極端に曲がっていて、カテーテルの冠動脈への到達が困難な場合があること、カテーテルの操作が難しくなる場合があることなどの制限もありますが、カテーテル検査・治療の後にすぐに動くことができ、活動制限がほとんど無いこと、出血性合併症が問題になりにくいことなどが最大の長所と言えます。入院期間についても、大腿動脈を用いた場合と比較して、より短くすることが可能です。最近ではカテーテルそのものやシステムの精度、安定性が向上し、冠動脈検査やステント治療のほとんどが橈骨動脈からのアプローチで可能となりました。

 当院でも、透析を行っている患者さん、その他橈骨動脈を使用することが好ましくない患者さんを除くほとんどの患者さんにこの橈骨動脈を用いたカテーテル検査・ステント治療を行っており、患者さんにより負担の少ない医療を目指しております。