教授挨拶

当教室は本邦で初めて心臓カテーテルを実施し、特に右心カテーテルを広く日本に普及した伝統ある教室であります。先人が苦労して築かれた伝統は、現在ではさらにStructure Heart Diseaseのカテーテル治療の実践へと形を変えて発展し、後輩に脈々と引き継がれております。

当教室の心臓カテーテル班は、「患者さんに優しく、安全に」をモットーとし、冠動脈インターベンションでは手首の動脈からカテーテルを挿入する経撓骨動脈インターベンション(TRI)を積極的に取り入れており、また左冠動脈主幹部に対するインターベンションや高度石灰化病変に対するロータブレーター、また慢性完全閉塞に対するインターベンションにも力を入れております。さらに近年急速に発展しているstructural heart disease (SHD, 心構造疾患)に対するインターベンションに積極的に取り組んでいます。

現在カテーテル班は2チーフ体制(総責任者 前川、SHD責任者 林田)で担当し、前川裕一郎講師が主任として冠動脈インターベンション、林田健太郎講師が共同主任として大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)や僧帽弁狭窄症のバルーン形成術(PTMC)などのSHDに対するインターベンションを担当しています。

2011年から当院で心房中隔欠損閉鎖術が開始されており、日本の成人施設では最も多くの症例を治療しています。同年前川講師による閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)も開始し、順調に症例数を伸ばしております。また2012年からは川上崇史助教による慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)のバルーン肺動脈形成術(BPA)も開始しており、現在まで重篤な合併症は一例も発生せず200件以上の手術数を重ねております。さらに2013年9月には手術室の機能と血管造影機能を持ち合わせた「ハイブリッド手術室」がオープンし、10月には、日本人として唯一人、指導医資格を持つ林田講師がTAVIを開始し、現在まで100例以上の症例を事故無く施行し、最先端の治療が展開されております。

関連病院との緊密な連携により、循環器に特化した手技別・疾患別の大規模レジストリ研究を進めています(インターベンション、心不全、心房細動)。その関連病院ネットワークを 【KICS (Keio Interhospital Cardiovascular Studies)】 と総称していますが、現場の先生方の精力的な臨床活動を専属の臨床コーディネイターの手によってデータ化し、発信を続けています。事務局の香坂講師、植田助教を中心に、インターベンションの質の評価や循環器疾患の日米間比較など、着実に成果をあげ始めています。

近年社会の高齢化に伴い、心臓だけでなく様々な心臓外の合併症を持った患者さんが増加しております。当院は大学病院としての先進的な治療に加え、すべての診療科が揃う総合病院としての機能を持ちあわせておりますので、このような高リスクな患者さんに対しても集学的かつ全人的な医療を提供可能であることが、大きな強みとなっております。

このように当院では各分野の専門医が、世界最高水準のインターベンションを提供いたします。ぜひ患者の皆様、先生方のお役に立ちたいと思っておりますので、いつでもお気軽にご相談ください。